先輩ママの知恵袋

保育ネットワーク・ミルク代表 小泉雅子さん

知恵袋4月号1

保育ネットワーク・ミルクとして活動をはじめ22年になります。当時の三田市はニュータウン開発が進み人口増加率全国1位を、10年間を続けていた頃です。三田で子育てを希望した若い世代もたくさん転居してこられました。かく言う私自身もニュータウンに転居してきた者の一人でした。

子どもが、7歳、5歳、1歳の時、ふとしたきっかけから自宅での一時預かりを始めました。自分の子どもと一緒に預かるという戸惑いはありましたが、子育て中だからこそ、子育ての悩みや苦労も十分理解でき、共感もできました。

当事者が、当事者を支援する活動は、ニュータウンの若い子育て世代を中心に口コミで広がっていきました。活動が「時代」「地域」のニーズに合っていたのか、問い合わせや預かりを希望する方が増え、私一人では、受け入れきれず、やむを得ずお断りせざるを得ない状況も起こり始めました。

「人の役に立ちたい」との思いで始めた活動であるにも関わらず、断ることは非常に心苦しく「困っている時が必要な時、その時にしなければ意味がない」と情けない気持ちでした。その状況を改善したいと考えたのが保育士のネットワークでした。

平成4年、元保育士3人で「保育ネットワーク・ミルク」を立ち上げました。預かりに関しては、理由は一切問わないで希望があれば預かる事にしました。当時は、今ほど子育て支援が、社会的に認知されていませんでした。仕事で保育園に子どもを預ける事でさえも後ろめたさを感じてしまうお母さんが多かった頃、仕事以外の理由で子どもを預けることは、尚更、理解されるものではありませんでした。その為、預けることに後ろめたさを感じるお母さんも決して少なくありませんでした。

しかし、子育てのしんどさは、人それぞれであり、決して他人が預かるか否かを決めるものではないと自分の子育て経験からも分かっていました。そんな時代ですから、私たちの活動を批判する声はありましたが、お母さんたちのニーズは、増える一方でした。

 

お母さんの心に寄り添う支援を

知恵袋4月号2

 

長い活動の中で節目と思える出会いがたくさんあります。ある日、『保育園で発熱しお迎えに来てほしいとの連絡が入ったが、大阪からはすぐには帰れないので子どもを迎えに行って欲しい』と連絡が入り、迎えにいき自宅でお母さんのお迎えを待っていました。お迎えにこられたお母さんは、玄関に入るなり崩れるように座り込んで子どもを抱きしめながら「ごめんね」と泣かれ「私が仕事しているから、よく熱をだすのですね。私の責任ですね」と自分を責められました。

私は、なんて言葉をかければいいのか分からず、ただただお母さんの背を撫でながら「お母さんのせいではないよ」と言うのが精一杯でした。大切な子どもだからこそ自分のせいだと思ってしまう切ないほどの母の愛を感じました。行為をもって良いか悪いかと判断するものではないと言うことを痛感しました。頑張るお母さんの力になりたい「心に寄り添う保育」「心に寄り添う支援」をしなければと強く思いました。

「心に寄り添う」とは、行動を許し好きな事をさせてあげることではなく、「そうせざるを得ない」気持ちに寄り添い支えることです。「行動」と「気持ち」は別なのです。永年の経験から思うことは、支援は、支援の理由を考えてするものではなく、助けて欲しいという人がいるのなら支援が必要だと言うことです。支援する側が良いとか悪いとか評価するものではありません。その人は「今、そう思うのだな」「そうしたいんだな」というように考え寄り添う事です。

自分の価値観で考えると良いか悪いかで判断してしまい、自分の価値観に合わない場合は、なぜそうなるのかと、態度にも言葉にも出てしまい「それはおかしいでしょう」と批判したくなったり、支援するのも嫌になったりします。関係は悪くなります。逆に「それは大変だろう」と人ごとに出来ず必要以上に気持ちを入れすぎると冷静な判断も出来ずお互いに傷ついてしまう事になったり、「しっかりしなさい」と指導したくなったりします。私が何とかしなければと思うとしんどくなります。自分に価値観があるように人にも価値観があり、自分とは違ってもいいのだと言うことは忘れてはいけません。

 

子育ては人と人とのコミュニケーションから

知恵袋4月号3

先日、久しぶりに懐かしい人からのメールが届きました。「先生お久しぶりです。覚えていますか」という書き出しで始まるメール、決して忘れられることなどできない人でした。その人は、苦悩を抱え、自分を責め、ままならない人生に、何度も生きることを諦めかけた人でした。「苦しくて哀しくていつ死んでもいいと思っていました。そんな中でも先生の言葉と涙を忘れたことは一度もなかった」「先生みたいに心に響く言葉が言える人になりたい」「私も先生のように人の役に立つ仕事がしたいと思います」

あの時の事が走馬燈のよう思い出されました。ただ、良いか悪いかではなく心を聴き、寄り添うことしか出来ませんでしたが、それで良かったのだと思えました。22年間、活動を続けてこられたのは、たくさんの親子との出会いがあったから、私たちを頼ってくれる方が居たからこそなのだと思います。支援していたつもりが支援されていた。お互い様、まさに共生です。「子育てに優しい社会」がじんわりと浸透して広がってきていると実感します。

子育て支援は、人間関係づくりです。支援者は、先生でも指導者でもありません。関わり続けていくこと、一人じゃないというメッセージを伝え続けることだと思います。

子育ての当事者として活動を開始し、気がつけば私も祖母世代になりました。子育てから孫育てになった今だからこそ、批判や非難ではなくしっかりと子育て中の親子に心を寄せ、祖母の立場で子育て支援を発信していきたいと思います。

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小泉雅子さん プロフィール

知恵袋プロフィール特定非営利活動法人 保育ネットワーク・ミルク 理事長、私立よこやま保育園 園長
公立保育園の保育士を退職後、子育て支援の必要性を痛感し、保育スペースとして自宅を開放。
その後、平成10年に三田町に保育ネットワーク・ミルクを開き、平成13年(2001年)7月にNPO法人として認証と同時に理事長に就任。
ミルクを「コミュニケーションを豊かに経験する場」として充実させるかたわら、三田市健康福祉課主催の母と子のふれあい教室の保育士を平成2年より17年3月まで務め、平成16年度より兵庫県少子化対策推進協議会推進委員を就任。
平成15年10月より私立よこやま保育園園長就任。

富田富士也氏、指導の下、コミュニケーションワーク、カウンセリングを学び、平成17年9月より同氏が代表する「子ども家庭教育フォーラム」と委託契約を結び、カウンセラー、セミナー講師等を行う。
日本保育学会正会員 こども環境学会正会員
全国保育協議会全国保育士協会 保育活動専門員
平成16年・17年 兵庫県少子化対策推進協議会委員
兵庫県ひろば子育て相談員

<お問合せ>
保育ネットワーク・ミルク
住所 〒669-1512 三田市高次2丁目4-38
TEL 079-565-4313
FAX  079-558-8630
HP http://www.hnpo.net/n/milk/

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